今までの「酒」とこれからの「酒」
フランスで「酒」という名前を聞くと、中国料理レストランで長きにわたりフランスで提供されている「酒」のイメージがあるかと思います。これは蒸留酒であり、アルコール度数が高く、食後酒として出されているものです。「日本酒のおちょこに近い形なのですが、ちょっと変わった仕掛けのある不思議な器」なのですが、この蒸留酒は日本の清酒(=日本酒=Saké japonais)ではないのです!また、この食後酒という飲み方も日本の元々の文化ではなく、現在では食中酒として飲まれています。ですので、ここではあえて「酒」ではなく「日本酒」という言葉で説明致します。
日本人が日本で飲んでいる日本酒とは?
日本酒とは、日本が古来より稲作を行い、その収穫された稲穂を脱穀した米からつくった飲み物を神に捧げるところから始まった儀式を伴う飲み物でした。フランスのワインがキリストの血をあらわすことや、神に仕える修道士がつくってきたという歴史に何か共通しています。神聖な飲み物と言うだけでなく、以下の点においてもワインと日本酒は似ています。
◆ 醸造酒であること
◆ アルコール度数が15度前後であること
◆ 食中酒であること(食事と一緒に、マリアージュも含めて楽しむもの)
こういった意味では、日本酒が「お米でつくった日本のワイン」と表現されることがあるのも頷けるところですよね。
近年の日本酒
日本酒と言えば日本食レストランでお寿司と一緒に楽しむといったイメージが強いでしょうか。確かに日本酒にはコハク酸やアミノ酸がたっぷり含まれており、魚介類とも非常に相性が良いものです。またワインがお肉や乳製品などの脂質と溶け合い、好相性をなすのに対して、ワインと合わせづらいヨード香(海藻類)、塩味、酸味、などとも好相性があり、また、一般にアルコール類と合わないスープとも旨味を持つ日本酒とも抜群なのです。食の多様化きわまる現代において、食卓において食べ物と飲物のマリアージュという観点に於いて、ワインが苦手な料理に日本酒が寄り添うという補完関係にあると言えるのです。
日本酒が最近、日本食レストランのみならず以下の場所においても見かけられるようになってきたのは大変喜ばしいことです。
◆ パレスホテルのバー
◆ フランス料理レストランやビストロ
最近は、ゆずリキュールなどと合わせた日本酒カクテルもモードになりつつあるようです。
日本酒の購入場所としても日本食品食材店のみならず
◆ ワインカーブ
◆ 百貨店
◆ インターネット通販サイト
などと多様化してきていて、フランスでも日本酒が広まっていることがわかります。
日本酒の香りや味わいの違いとは
フローラル、フルーティな香りや味(バナナ、リンゴ、果実、メロン)などの香りがして、華やか、爽やかな吟醸酒、生酒などのモダン系。そして、野菜や穀物の香りや味のする伝統的なタイプに、スパイシー、乾燥したフルーツなどの香りや味がする熟成されたタイプを含めたクラッシック系というように二つに分けると、理解しやすいです。
主に吟醸酒、大吟醸酒系など |
主に生酒、本醸造酒、普通酒など |
主に純米酒、生酛、山廃系など |
主に古酒、貴醸酒など |
日本酒の味の個性や特徴は?
ワインがぶどうの果汁を絞って発酵させるのに対し、日本酒の場合は米を磨いて蒸し、山からの恵みの水を使って醸造します。日本酒もワインのぶどうのセパージュと同様、米にも色々な銘柄があり、その米の種類によって個性が代わります。ワインとの共通点も多いのですが、ひとつユニークなのは、米を磨くという点です。これで日本酒の味と香りが変わるのは、非常に興味深いことなのです。
☆家庭で飲むにあたりマリアージュと器、温度について。実際に日本酒を飲む場合に何を合わるかがワイン同様に大事ですよね。シチュエーション合った料理にぜひ日本酒と楽しんでいただきたいです。また、日本酒は熱燗で飲むのか、冷やで飲むのかといった温度でも変化をつけることができる日本酒があるのも特徴があるといえます。
としたら、やはり料理の相性は和食や寿司だけなのでしょうか?
野菜などを多用した前菜のような軽く、シンプルな料理には、モダン系の生酒などの爽酒が良いです。また、揚げ物でも、天ぷらをレモン&塩なら、モダン系の薫酒や爽酒の吟醸酒。この天ぷらをお出しで食べるなら、純米酒系も良いですね。グラタンやすき焼きなどのしっかりした味付けの料理なら伝統的な純米酒が特にお薦めです。さらに、フォアグラのポワレやロックフォールなどの青カビ系なら古酒や貴醸酒がとてもマッチングします。デザートなら吟醸系モダンなタイプが意外によく合います。
フルーティかつフローラルな吟醸や大吟醸などは特にワイングラスで飲むことで特徴を捉え楽しめることができます。また、純米酒ならぐい飲みの器がしっくりときますね。純米酒のような旨味たっぷりの日本酒は常温でも良し、燗酒でいただくとより旨味がまし、より美味しく召し上がっていただけます。
これからの日本酒
美食の国フランスで今、緑茶や柚子、土佐酢、鰹、のり、わさび、わかめ、のり、柚子胡椒など以前は見かけることのなかった食材がどんどん増えています。日本の食文化が広まってきて親しまれているのは嬉しいことです。そんな日本食文化の浸透と共に、この日本酒というものがフランスの現代の食文化において日常的に愛される飲料としてみなさまに認知されていきますように!
乾杯!